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第48話 悪女記事の手元

Penulis: 花柳響
last update Tanggal publikasi: 2026-07-21 06:01:24
「莉々花だけでこの文章は作れない」

 征臣はタブレットの画面を一瞥しただけで、秘書へ視線を向ける。

「東都経済新聞の出資構成を出せ。直近三か月の広告主も」

 息を整えてから、顔を上げた。

「……一つだけ、聞かせてください」

 秘書が下がる。ドアが閉まったあと、部屋にはタブレットの薄い光だけが残った。

「……潰したい」

「やめてください」

「しそうな顔をしています」

 征臣は黙った。タブレットの縁にかかっていた指が、ゆっくり離れる。

「君は、どうしたい」

 すぐには答えられず、私は記事の末尾をもう一度見た。

 母の部屋を知る者。帳簿を盗品にしたい者。私が反論すれば、感情的な言い訳に見える。

 なら、母の帳簿を使うしかない。

「訂正記事は待ちません。先に、母の慈善帳簿を出します」

「また君が傷つく」

「もう、今さらです」

 言った途端、青い手袋の下で指輪の跡がじわりと熱を持った。

 私は震える指で、記事の末尾を押さえた。

「帳簿を出します。隠したら、向こうの話だけが残るから」

 征臣は何かを言いかけたが、タブレットを私の方へ少し押しただけだった。

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